メタハラ導入記2
(by 森リクガメ研究所)


まず、両口金型のメタルハライドランプは、扁平の長方形をしているため、断面的にも長方形と言えます。蛍光灯の断面は円形ですので、どの方向へも同じ条件で光を放出しますが、両口金型のメタルハライドランプの場合、長方形断面の短辺方向と長辺方向では光の放出量に実際は差があります。ランプ自体を取付口にセットするのには、短辺面が上下になるようにセットするため、実際には上下方向よりも左右方向への光の放出量が多くなります。

そのセットされたランプの光が、ドーム型の形状の反射板によって反射されて下方に照射されるため、光量の最大値がランプの真下から、若干左右方向にずれるのが特徴といえます。そのため以下の測定においては、ランプの真下とピークの位置と両方でのデーターを測定してあります。

ちなみにこの製品の場合光源からの垂直方向が同じならば、メタハラの場合光源の真下から、30センチ程左右にずれた地点がピーク値を示しました。


光源からの距離におけるUVB量(マイクロW/cm2)の測定

光源からの距離(cm)
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
メタハラ150W(直下)
35
7.0
3.0
1.6
1.2
0.9
0.7
0.6
0.4
0.3
メタハラ150W(最大値)
48
17.5
8.5
5.5
2.6
1.6
1.1
0.8
0.6
0.5
メタハラ150W(最大値)保護カバー付の場合
9.5
1.5
0.9
0.5
0.3
0.2
0.1
-
-
-
レプティサン5.0 20W×1(直下)
35
19.0
12.0
7.1
5.0
3.7
2.8
2.1
1.6
1.1
レプティサン5.0 20W×2(直下)
36
21.0
17.0
12.5
8.8
6.5
5.3
4.3
3.4
2.9
レプティサン5.0 20W×2(直下)蛍光灯カバー付
26
15.0
12.5
8.4
6.2
4.6
4.1
3.5
2.8
2.5

 

光源からの距離における温度(室温26度にて測定)

距離(cm)
10
20
30
40
50
60
70
温度(度)
51.7
37
30.8
28.5
27.5
26.5
26(室温)

以上の測定から読取れることを整理してみますと、

1)150Wの両口金型のメタルハライドランプ1灯のUVB放出量は、光源からの距離が40cm程度までである場合レプティサン5.0を若干下回る程度である

2)レプティサン5.0とメタハラを比較すると、メタハラは、距離が離れるにしたがって、急激に測定されるUVB量が減少する。これは、メタハラの放出する紫外線の波長がレプティサン5.0が放出する紫外線の波長に比べて、より短波長のため、空気中の水分や塵などに拡散されやすいための結果と思われる。ちなみに10センチの距離ならば、メタハラの方が数字が大きいのも、根拠となろう。つまり、UVBの中でも、メタハラの放出する波長は、より短波長のため、実際ビタミンD3の合成に関与するUVBの中では、長波長帯のUVBの放出は、蛍光灯で確保するのが有効であろう。

3)メタハラの製品に大抵付属するUVカットの保護カバーを設置した場合には、20センチ以上離れれば紫外線はほぼカットされる。

4)一般的な蛍光灯と比べると、発熱量が大きい。光源から20センチ以内は、リクガメ飼育には危険温度

5)明るさが蛍光灯に比べると圧倒的にあるため、紫外線量のみ優先して高さ40センチ程度に設置したりすると、リクガメの目が危険である。ちなみに40センチの距離から、人間の肉眼で光源を見た場合、1秒から2秒で何も見えなくなる。その後目をそらしても数分間は視力が回復しない程

と言えます。

つまり、メタルハライドランプはリクガメ飼育に利用する場合、ある程度距離を離した位置からの照射によって明るさを確保するという目的で利用するのが妥当であると考えられます。紫外線の効果を期待する場合には、別に蛍光灯を利用する方が安全である。また、保温に関しても、別途にホットスポットを安全な距離に設置するのがよい。

データーでの数値でみると、あまり導入の利点がないように感じられるかもしれませんが、実はこの光量は絶大な効果があるといってよいかもしれません。この器具を設置したことにより、多くのカメ達が器具を上部に設置した屋内の砂場に集まるようになりました。単にホットスポットを設置するのに比べて、明るさのある場所を提供できるということは、カメ達にとって「明るい場所」と「温かい場所」が自然界では同じ場所を意味することを考えれば、その存在意味は大きいと言えるのではないでしょうか。

コストはかかりますが、それに見合った効果が期待できそうです。

 

PS:メタハラの効果について、補足が必要と思われる観察結果がありますので、追加します。

この器具を設置後、上部にこの器具を設置した砂場が、カメ達にかなり人気のスポットになっていることは、すでに記したと思います。明るさのみの効果にしては、かなり長時間そこで過す個体もいるので、他にも原因があると思い、あれこれ観察して調べておりましたが、どうも器具の下での温かさにも原因がありそうです。

温度の測定結果では、1メートル離れると、ほぼ室温になったため、保温に関してあまり効果が期待できないかと思っていたのですが、あらためてスペクトル分布を見てみると800ナノメートル以上の波長も十分放出しているのを考察から外してしまっていました。紫外線領域ばかりに注目してしまった結果です。つまり、メタハラは赤外線をかなりの量放出している訳です。赤外線ですので、媒体を必要とせず、つまり空気の温度がどうであろうとあまり影響を受けずに、対象物を直接温める効果を有しているランプである訳です。そのため、メタハラの下にカメがいる場合、空気温度(室温)にあまり左右されずにカメに当った赤外線はカメの皮膚などの表面や皮膚直下などの水分に有効に吸収されて、体温を温めるエネルギーに変わって、温ためてくれるという効果がある訳です。

太陽の光に近い効果といえるのではないでしょうか。

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HIDランプなどについての解説は こちら から。